台風で済州のダイビングは中止? 船が出ない本当の基準
台風が済州をそれてもダイビングは中止になります。波浪注意報の基準(有義波高3m・風速14m/s)、うねりが先に到着する理由、西帰浦のボートが出る条件、8月の日程の組み方をインストラクターが解説します。

台風が済州に上陸しなくてもダイビングは中止になります。船を止めるのは雨ではなく波です。 韓国気象庁の波浪注意報は、海上の風速が14m/s以上で3時間を超えて続くか、有義波高が3m以上になると予想されるときに発表されます。台風がまだ沖縄の南にあっても、そのうねりは1~2日先に西帰浦の海に届きます。8月に西帰浦でボートダイビングを考えているなら、台風の現在位置よりこの数字を見る方がはるかに確実です。
台風は済州をかすめなくてもダイビングを止める
台風シーズンに一番誤解されやすいのがうねりです。韓国気象庁と国立災難安全研究院は、周期8秒以上の長周期の波をうねりとしています。その場の風が作る波と違い、うねりは遠くの台風からエネルギーを運んでくるため、到着する海域の天気とは無関係に押し寄せます。
厄介なのは、この波が危険に見えないことです。うねりの特徴は、普段は穏やかに見えていても数分おきに突然大きな波が入ってくることです。港から海を眺めて「今日、大丈夫そうですけど」とおっしゃるゲストが多いのはこのためです。ダイバーにとってなぜこれが問題かというと、ダイビングで最も脆い瞬間がすべて水面にあるからです。機材を背負ってボートからエントリーする瞬間、浮上後にピックアップを待つ数分、タンクを背負ってラダーを上がる瞬間。水深15mの下はむしろ静かです。事故はいつも最後の3mで起きます。
台風が済州の南側や東シナ海を通ると、その波が韓国南岸側へ伝播して済州沿岸にうねりと高い波が入ります。進路が朝鮮半島を完全にそれていても同じことです。現在北上中の第13号台風ドルフィンがまさにそのケースです。
ドルフィンは中心気圧920hPa、最大風速58m/sまで発達すると予想された「超強力」台風です。超強力は韓国気象庁が2026年から適用した最上位の等級で、最大風速54m/s以上が基準です。ただし同庁は朝鮮半島への直接影響について「現段階では断定し難い」としており、8月4日時点の予報誤差半径は440kmでした。進路が日本の南へ抜けたとしても、あの規模の台風が作るうねりは済州の南の海に影響し得ます。予約を持っている方に覚えておいてほしいのは一つだけです。予想進路図に済州が入っていないからといって、ダイビングが保証されるわけではありません。
船が出るかどうかはこの数字で決まる
中止かどうかを最も正確に予測できる指標は、台風のニュースではなく韓国気象庁の波浪特報です。基準は公開されており、数字ではっきりしています。
| 区分 | 海上の風速 | 有義波高 | ダイビングボート |
|---|---|---|---|
| 特報なし | 14m/s未満 | 3m未満 | おおむね通常出航 |
| 波浪注意報 | 14m/s以上が3時間継続 | 3m以上 | 出港管制の対象、ほぼ中止 |
| 波浪警報 | 21m/s以上が3時間継続 | 5m以上 | 出航不可 |
波浪特報が発効すると船舶の出港管制がかかります。管制の基準は船舶の種類・長さ・総トン数・航海区域によって異なり、韓国の海洋水産部は海上に気象特報が発表された場合や視界が制限され安全運航に支障が懸念される場合に出航を管制できます。ここで初心者の方が最も誤解しやすい点があります。
フェリーが出る日でもダイビングボートは出ないことがあります。 西帰浦のダイビングボートは、済州の主要港を結ぶ大型フェリーと比べるとはるかに小型です。出港管制の基準自体がトン数と長さに応じて違うので、同じ波高でも大きな船は出て小さな船は止まります。「今日は船が出ていると聞いたのですが」がダイビングにはあてはまらない理由です。そして基準をクリアしても、最終判断は船長とインストラクターが行います。法的に出られることと、ゲストを連れて出ていいことは別問題です。
今年の夏の実例を見ると規模感が伝わります。2026年7月14日、全国に波浪注意報が出て42航路が管制され、その2日前の7月12日には済州に強風特報が出て済州空港で130便以上が欠航・遅延しました。どちらも台風の上陸ではなく、強風と波浪だけで起きたことです。
海は空より遅れて回復する
台風が通った翌朝、空は嘘のように晴れます。台風一過の澄んだ天気は有名ですから、その日に予約を入れている方は当然できると思います。実際にはこの日が一番微妙です。
理由は二つ。一つは、うねりは風より長く残るからです。台風の風が遠ざかっても、その風が作った長周期の波は押し寄せ続けます。空は晴れているのに波高は高いという日は、8月にはよくあります。もう一つは視界です。大きな波は底の砂や浮遊物を丸ごと巻き上げます。水面が穏やかになっても、水中は数日濁ったままです。
回復の速さは台風の勢力と進路、そしてポイントの底質によって大きく違います。砂底のポイントは長引き、岩盤中心のポイントは比較的早く戻ります。何日で戻ると言い切れる性質のものではないので、その日にインストラクターに聞くのが唯一正確な方法です。虎島(ボムソム)をはじめとする西帰浦のポイントには一つ利点があって、島そのものが防波堤の役割を果たすため、風向きによっては片面が穏やかに残ることがあります。南風が強い日に島の北側が生きている、といった具合です。ただしこれは毎日変わる判断なので、前日に確定することはできません。
実務的な結論はシンプルです。台風通過の翌日より、2日後の方がいい。
台風シーズンの日程の組み方
8~9月の済州ダイビングをあきらめる理由はありません。水温が一年で最も良く、視界も年間を通して上位の時期ですから。ただし日程の組み方は変えた方がいいです。
余裕の日を入れる。 2泊3日の日程にダイビングを1日入れると、その1日が飛んだときに代替がありません。3泊4日でダイビング可能日を2日以上確保すれば、台風一つくらいは吸収できます。
ダイビングを日程の前半に置く。 初日に入れておけば、中止になっても残りの日に振り替えられます。最終日に入れると振り替え先がありません。「まず観光して最後の日にダイビング」という組み方をされる方が多いのですが、台風シーズンは逆が正解です。
見るページを決めておく。 台風のニュースより、韓国気象庁の海上短期予報で済州島南側の波高を見る方がはるかに実用的です。フライトが心配なら、航空気象庁の運航影響情報も一緒に。済州は台風でなく強風だけでも足止めを食らう島です。
キャンセル規定を予約前に確認する。 気象理由で中止になったときに日程変更ができるのか、返金条件はどうなっているのかはショップによって違います。台風シーズンに予約するなら、支払う前にここをはっきりさせておく方が安心です。
2026年の夏はどうか
韓国気象庁の年気候展望によると、今年の夏に韓国へ影響する台風は平年並み(夏季平均2.5個)と見られています。個数だけ見れば特別な年ではありません。ただし同じ展望で、6~8月の韓国周辺海域の海面水温は平年より高いとされています。
温かい海は台風が勢力を保つのに都合のいい条件です。個数が平年並みでも、一つ一つがより強くて上がってくる可能性があるということで、ドルフィンが超強力まで発達した背景にもこの条件があります。済州の海の水温変化は水中の生き物の顔ぶれまで変えていますが、台風は同じ変化が水面の上で現れる形です。
なお、8月の西帰浦で台風と並んで確認したいもう一つの変数がクラゲです。今年のクラゲの状況と対処法は別途まとめてあります。
まとめると
台風シーズンの済州ダイビングで見るべきは、台風の位置ではなく有義波高です。3mを超えれば波浪注意報が出て、まず小さな船から止まります。実質的な影響期間は台風が来る2日前から通過後2日までで、空が晴れたからといって海が戻ったわけではありません。日程に余裕の日を入れ、ダイビングを前半に置く。それだけで台風シーズンでも西帰浦でいいダイビングができる確率はずいぶん上がります。
日程を決めかねている方は、いついらっしゃるか教えていただければ、その期間の済州南側の海の状況を一緒に見て、どの日をダイビングにあてるのがいいかご提案します。
よくある質問
台風が日本方面へ抜けても済州のダイビングは中止になりますか?
なります。うねりは台風のある沖合からエネルギーを運んで移動するため、進路が済州をそれても南側の海に高い波が入ります。周期8秒以上の長周期の波なので、港から見ると穏やかに見えて数分おきに大きなセットが入るのが特徴です。有義波高が3mを超えれば波浪注意報が発効し、小型船から出港管制の対象になります。
台風が通った翌日にダイビングできますか?
空は晴れても海の回復は遅れます。台風の風が遠ざかっても長周期のうねりは数日残り、大きな波が底を巻き上げるため水面が穏やかになっても視界が数日悪いままということがあります。回復の速さは台風の勢力とポイントの底質によって違うので、当日のインストラクターの判断が一番確かです。日程に余裕があるなら、通過の翌日より2日後をおすすめします。
フェリーが通常運航していればダイビングボートも出ますか?
必ずしもそうではありません。出港管制の基準は船舶の種類・長さ・総トン数・航海区域に応じて適用されるため、同じ波高で大型フェリーは運航し、小型のダイビングボートは止まることがよくあります。また基準をクリアしても、ゲストを乗せて出るかどうかは船長とインストラクターが別途判断します。
天候不良で中止になった場合、返金や日程変更はできますか?
ショップによって規定が異なります。別の日に振り替えてくれるところもあれば、返金条件が決まっているところもありますので、台風シーズンの予約では支払う前に確認することをおすすめします。当店へお問い合わせいただければ、ご予約前にご案内します。
8月と9月で台風リスクが低いのはどちらですか?
どちらも台風シーズンなので、どちらが安全とは言い切れません。韓国気象庁は2026年夏季に韓国へ影響する台風を平年並み(2.5個)と見込んでいますが、この個数はシーズン全体の値なので特定の日付の予測には使えません。月を選ぶより、日程に余裕の日を入れてダイビングを前半に置く方が実際に役立ちます。




